職場や学校、あるいはプライベートな関係において、なぜか自分にだけ当たりが強い人がいて、不快な思いをしたり、ストレスを感じたりすることは少なくありません。
人は甘えられる相手や劣等感を抱く相手に対して、無意識に強く当たってしまうことがあります。
このような状況が続くと、心が疲れてしまったり、自分に何か原因があるのではないかと自分を責めてしまったりすることもあるでしょう。
しかし、多くの場合は、相手側の内面にある心理的な要因やあなたとの関係性に対する一方的な認識に起因しています。
この記事では、自分にだけ当たりが強い人の心理を深く掘り下げ、なぜ自分がターゲットにされやすいのか、そしてその状況から自分を守るための具体的な対処法を解説します。
まずは相手の心理とご自身の状況を客観視して、健全な人間関係を築くための一歩を踏み出しましょう。
- 自分にだけ当たりが強い人の心理が理解できる
 - 自分だけがターゲットにされる理由がわかる
 - 自分を守るための具体的な対処法を学べる
 - 状況を悪化させる避けるべき行動を把握できる
 
自分にだけ当たりが強い人の心理とは?
- 全てを許してくれると甘えている
 - 自分より下だと見下している
 - ストレスのはけ口にしている
 - 嫉妬や劣等感を抱いている
 - 距離が近い相手にだけ素を出している
 - なぜ自分だけがターゲットにされるのか
 
全てを許してくれると甘えている

自分にだけ当たりが強い人の心理の一つとして、相手があなたに対して甘えているという可能性が考えられます。
これは、ポジティブな意味での信頼関係ではなく、「この人なら自分の本音や感情をぶつけても見捨てないだろう」「多少強く言っても許してくれるだろう」という依存的な期待に基づいています。
相手は、感情をそのままぶつけても関係は壊れないと無意識に判断しているのです。
この行動の本質には、承認欲求や「見捨てられたくない」という不安が隠れている場合があり、相手がどこまで受け入れてくれるかを試す「試し行動」として、攻撃的な態度に出ることもあります。
自分より下だと見下している

相手があなたを「自分より下だ」と見下し、優越感を抱いていることがあります。
このタイプの人は、他者を上下関係で判断し、自分が優位に立ちたい、あるいは他者を支配したいという欲求を持っています。
あなたに対してだけ強い態度を取るのは、反撃してこない安全な相手だと認識し、自分の優位性を確認しようとしているためです。
しかし、この行動の本質は、相手自身の自己肯定感の低さの裏返しであることが少なくありません。
自信のなさを隠すための防衛行動として、他者を意図的に下げることで、かろうじて自身のプライドを保っている状態といえます。
なお、人を見下す人にありがちな傾向については、「人を見下す人にありがちな傾向とは?職場で使える具体的な対処法」の記事で詳しく解説しています。

ストレスのはけ口にしている

相手が仕事や私生活など、他の場所で我慢している不満やイライラを、安全に発散できる相手としてあなたを選んでいる可能性があります。
この場合、攻撃の理由そのものに合理的な根拠はなく、単に相手の都合で感情がぶつけられている状態です。
この心理の根本には、自分の感情を自分で処理できない「感情処理の未熟さ」や、自分の不満の原因を他者に押し付ける「責任転嫁」の傾向が見られます。
あなたをストレスのはけ口にすることで、一時的に心のバランスを取ろうとしているのです。
嫉妬や劣等感を抱いている

あなたの能力や職場での評価、人間関係、あるいはプライベートの充実ぶりに対して、相手が密かに嫉妬や劣等感を抱いている場合も、攻撃的な態度として現れることがあります。
相手は、あなたの存在や成果に過敏に反応し、それを自分への脅威と感じています。
攻撃的な態度を取ることで、あなたの評価を下げようとしたり、自分自身の不安から目をそらしたりする自己防衛の一種です。
本質的には、自己価値が他者との比較によってしか測れないという脆さの表れといえます。
距離が近い相手にだけ素を出している

前述した「全てを許してくれると甘えている」の心理とも関連しますが、相手があなたを親しい相手として認識しているために、態度が雑になっていることがあります。
他の人には気を遣って丁寧な言葉遣いをしていても、あなたに対してだけは「素の自分」を出しているつもりで、配慮を欠いたキツい言い方になっている状態です。
本人は悪気がないこともありますが、これは親密さと無礼を混同している状態といえます。
相手が「親しい間柄なのだから、これくらいは許される」と一方的に判断しており、健全な人間関係に必要な境界線(バウンダリー)が欠如していることが原因と考えられます。
なぜ自分だけがターゲットにされるのか

これまで見てきたように、自分にだけ当たりが強い人には様々な心理があります。
では、多くの人がいる中で、なぜあなただけがそのターゲットとして選ばれてしまうのでしょうか。
もちろん、あなた自身に非があるわけではありません。
むしろ、あなたの持つ誠実さや優しさが、相手にとって「攻撃しても安全な相手」という誤った認識を与えてしまっている可能性があります。
- 反論しない、受け身で大人しい
 - 責任感が強く、仕事を任されやすい
 - 断れない性格で、反撃しないと思われている
 - 相手の感情を優先しがちで気を遣いすぎる
 - 優秀で周囲から評価されている(嫉妬の対象)
 
もしご自身に当てはまる項目があっても、それはあなたの短所ではなく、多くは長所です。
しかし、自分を守るためには、こうした特徴が悪用される可能性があると知っておくことも大切です。
自分にだけ当たりが強い人への対処法
- 過剰な反応はせずに冷静に受け流す
 - 相手へ境界線を示す
 - 相手との関係性や距離感を見直す
 - 周囲に相談する
 - 状況を悪化させる避けるべき行動
 
過剰な反応はせずに冷静に受け流す

自分にだけ当たりが強い人への対処法として、まず大切なのは、相手の感情に巻き込まれないことです。
相手が感情的になっているときに、こちらも感情的に反応したり、過剰に萎縮したりすると、相手の行動をエスカレートさせる原因になり得ます。
まずは深呼吸し、相手の言葉そのものではなく、相手が感情的になっているという事実だけを受け止め、冷静に受け流す姿勢を見せましょう。
深刻に受け止めすぎず、「この人は今、ストレスが溜まっているのだろう」と客観視することも有効です。
状況によっては、万が一の事態に備えて、いつ・どこで・どのような言動をされたか、具体的な事実を記録しておくことも自分を守るために重要になります。
感情的な記述ではなく、客観的な事実だけを時系列で残しておきましょう。
相手へ境界線を示す

相手の態度が甘えや無礼から来ている場合、相手は自分の行動があなたを傷つけていることに気づいていない可能性もあります。
その場合、冷静に境界線(バウンダリー)を示し、不快であることを伝える対処法が有効です。
これは感情的に反撃することとは異なります。英国の国民保健サービスの一部局であるNHS Fife が解説するアサーティブ・コミュニケーションの考え方に基づき、冷静に「I(アイ)メッセージ」で伝えることが重要です。(出典:Communication and assertiveness|NHS Fife, 最終閲覧日 2025-10-25)
(事実として)先ほど〇〇という言い方をされて、
(影響として)私は少し威圧的に感じ、業務に集中しにくくなります。
(要望として)恐れ入りますが、今後はもう少し具体的にご指摘いただけると助かります
このように、相手を非難するのではなく、「自分はどう感じているか」を主語にして伝えることで、相手も受け入れやすくなります。
なお、アサーティブ・コミュニケーションについては、「生産性のない会話への対処法|職場での効率的なコミュニケーション術」の記事で詳しく解説しています。

相手との関係性や距離感を見直す

全ての相手と良好な関係を築く必要はありません。
特に、あなたをストレスのはけ口にしたり、見下したりする相手とは、意識的に距離を取ることが最も現実的な対処法となる場合があります。
可能であれば、職場での座席を移動する、関わる必要のある時間を最小限にするなど、物理的な距離を取りましょう。
それが難しい場合でも、会話は必要最小限の業務連絡に留め、プライベートな話題は避けるなど、心理的な距離を置くことで、相手があなたに干渉する機会を減らすことができます。
周囲に相談する

一人で抱えきれないほどのストレスを感じている場合、あるいは仕事を辞めたいと考えるほど追い詰められている場合は、決して一人で悩まず、信頼できる第三者に相談してください。
社内での相談
まずは、信頼できる上司や人事部、コンプライアンス窓口に相談することが考えられます。
その際は、感情的にならず、前述した事実の記録をもとに、客観的に状況を説明することが重要です。
なお、厚生労働省の公表資料では、職場におけるパワーハラスメントの3要素が示されており、精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)もその類型の一つとされています。(出典:職場におけるハラスメント対策パンフレット|厚生労働省, 2024-11)
また、米国国立労働安全衛生研究所(CDC/NIOSH)の定義においても、職場の暴力には身体的なものだけでなく、脅迫や嫌がらせ、言語的虐待も含まれるとされています。(出典:About Workplace Violence|CDC/NIOSH, 2024-12-03)
自分にだけ当たりが強いという状況が、単なる人間関係の問題ではなく、ハラスメントに該当する可能性についても客観的に判断しましょう。
社外の公的窓口への相談
社内での相談が難しい場合は、公的な窓口を利用することも有力な選択肢です。
前述した厚生労働省は、全国の労働局や労働基準監督署内に、「総合労働相談コーナー」を設置しています。
ここでは、職場のトラブルに関する相談を専門の相談員が無料で受け付けており、必要に応じて労働局長による助言・指導や、あっせん(裁判外紛争解決手続)の案内も行っています。(出典:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省, 最終閲覧日 2025-10-25)
状況を悪化させる避けるべき行動

良かれと思って取った行動が、かえって状況を悪化させてしまうこともあります。
自分を守るために、以下のような対処法は避けるように意識しましょう。
| 避けるべき行動 | 推奨される行動 | 
|---|---|
| 相手の機嫌を取ろうと過剰に謝る | 冷静に事実のみ受け止め、心理的距離を置く | 
| 感情的になって言い返す | アサーティブに(冷静に)要望を伝える | 
| 一人で抱え込み自分を責める | 事実を記録し、信頼できる第三者に相談する | 
特に、機嫌を取ろうと過剰に謝るという行動は、相手に「何を言っても大丈夫だ」という誤った認識を与え、甘えや攻撃を助長する可能性があります。
非がないのであれば、冷静に対応することが重要です。
自分にだけ当たりが強いのは甘え?心理と対処法まとめ
この記事では、自分にだけ当たりが強い人の心理と、その理不尽な状況から自分を守るための具体的な対処法について解説しました。
相手の行動は多くの場合、その人自身の心理的な課題や未熟さに起因しており、あなたが不必要に傷つく理由はありません。
このような理不尽な状況に悩んでいる方は、決して「自分に原因があるのかもしれない」と一人で抱え込まず、ご自身の心の健康を最優先に行動することが重要です。
最後に、ここまでのポイントを振り返りましょう。
- 当たりが強い原因は相手があなたに甘えている場合が多い
 - 見捨てられたくないという不安から試し行動に出る場合がある
 - 自分より下だと見下すのは自己肯定感の低さの表れである
 - ストレスのはけ口にされるのは感情処理の未熟さが原因である
 - 嫉妬や劣等感から攻撃し自己防衛するケースもある
 - 親しさと無礼を混同し境界線が欠如している場合がある
 - ターゲットにされやすいのは反論せず受け身な特徴が影響し得る
 - 対処法は相手の感情に巻き込まれず冷静に受け流すことが基本である
 - Iメッセージで冷静に境界線を示すことが有効である
 - 物理的かつ心理的な距離を見直すことも重要である
 - パワハラの可能性がある場合は事実を記録して周囲に相談する
 - 公的な相談窓口を利用することも選択肢の一つである
 - 感情的に言い返したり過剰に謝ったりする行動は避ける
 - 自分を責めず心を守ることを最優先する
 

よくある質問
自分にだけ当たりが強い人が同性の場合、どのような心理なのでしょうか?
同性の場合、嫉妬や仲間意識が原因の場合があります。まずは冷静に距離を置き、業務上必要な関わりに留めましょう。感情的に対抗せず、事実ベースで対応することが大切です。
自分にだけ当たりが強いのは、期待の裏返しなのでしょうか?
本当に期待されている場合、厳しい指摘の中にも具体的な改善点やフォローがあります。一方、ただのストレス発散や優越感の場合は、人格否定や感情的な非難に終始しがちです。
自分にだけ当たりが強い人への仕返しを考えてしまいます。
仕返しは状況を悪化させ、あなた自身の評価を下げるリスクが高いため推奨しません。冷静に対処法を試し、公的な相談窓口を利用するなど、長期的に自分を守る方法を選びましょう。


	
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