職場で高圧的な人が近くにいると、その言動に萎縮してしまい、ストレスを感じることは少なくありません。
そうした理不尽な態度に対して、「なぜあんな言い方しかできないのか」という不信感や、「苦手だ」「疲れる」という不満が募るのも無理はありません。
高圧的な言動には、その人の心理的な背景だけでなく、これまでの育ちや家庭環境が関係している場合があります。
この記事では、高圧的な人の心理と育ち、その先にある末路、そして自分自身を守るための具体的な対処法を詳しく解説します。
相手の心理や育ちを客観的に理解し、ご自身の心身を守るための一歩を踏み出しましょう。
- 高圧的な言動の背景にある3つの主な心理がわかる
- 高圧的な人の育ちが理解できる
- 高圧的な人が迎える3つの末路を学べる
- 自分自身を守るための具体的な4つの対処法が身につく
高圧的な人に共通する心理
- 自己肯定感の低さと劣等感の裏返し
- 自分の弱さや失敗を隠したいという恐怖心
- 他者をコントロールしたいという強い支配欲
自己肯定感の低さと劣等感の裏返し

高圧的な言動の根本には、強い劣等感や自己肯定感の低さが隠れている場合があります。
自分自身に絶対的な自信を持てていないため、あえて他者を攻撃したり、見下したりすることでしか自分の価値を確認できません。
他者に対してマウントを取る、あるいは厳しく批判するといった行動は、裏を返せば「自分は相手よりも優位である」と周囲や自分自身に示そうとする防衛反応であるとも考えられます。
自らの内面にある不安や劣等感を直視する代わりに、他者を自分より下に置くことで、一時的に心のバランスを保とうとしているのです。
このような心理を持つ人は、相手が自分より優れていると感じると、その不安を打ち消すために、より一層高圧的な態度に出る傾向が見られます。
自己肯定感が低い原因や改善法については、「自己肯定感が低い大人は手遅れ?4つの理由と高める方法を詳しく解説」の記事で詳しく解説しています。

自分の弱さや失敗を隠したいという恐怖心

高圧的な態度は、自分の弱さや不安を隠すための「鎧」として機能している可能性があります。
「自分は常に有能でなければならない」「弱みを見せたら負けだ」といった強い思い込みや、失敗に対する極度の恐怖を抱えていることが少なくありません。
もし自分の能力不足や過去の失敗が露呈すれば、築き上げてきた自分の立場やプライドが崩れてしまうのではないかと恐れています。
そのため、他者から批判されたり、自分の弱点を指摘されたりする前に、あえて強い態度に出て相手を威圧し、それ以上踏み込ませないようにしているのです。
このタイプの人は、特に自分の専門分野や得意な領域で、他者から意見されることを極端に嫌う傾向があります。
他者をコントロールしたいという強い支配欲

物事が自分の思い通りに進まないと強いストレスや不安を感じるため、周囲の人や状況を自分の管理下に置きたいという強い支配欲を持つ人もいます。
彼らにとって、他者は自分の意図通りに動くべき存在であり、想定外の行動を取ることは許容しがたいことです。
そのため、権力や立場を利用したり、大声を出したり、相手の意見を力ずくでねじ伏せたりすることで、他者をコントロールしようと試みる傾向があります。
この心理の背景には、「自分の思い通りになる=安全」という価値観があります。
他者を支配し、自分のテリトリーを守ることでしか安心感を得られないため、自分の意に沿わない相手に対しては攻撃的になりやすいのです。
高圧的な人の育ちとは?
- 高圧的または権威的な家庭環境
- 過度な期待と結果第一主義
- ありのままを認められなかった経験
- 過保護な環境と挫折経験の少なさ
高圧的または権威的な家庭環境

まず考えられるのは、親が高圧的であったり、非常に権威的であったりする家庭環境で育ったケースです。
幼少期に、親が高圧的な言動で子どもを支配したり、常に批判的な態度で接したりする環境にいると、それが当たり前のコミュニケーション方法として、無意識に刷り込まれてしまうことがあります。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、幼少期の逆境体験が、成人後の健康や行動に長期的な影響を及ぼし得るという公衆衛生上の知見を示しています。(出典:About Adverse Childhood Experiences (ACEs)|米国疾病予防管理センター, 2025-09)
高圧的な家庭環境もこうした逆境体験の一つとなり得ます。
その結果、他者との関係構築において、自分がかつて経験した支配的な振る舞いを無意識に模倣してしまう可能性が指摘されています。
過度な期待と結果第一主義

家庭内で、学業やスポーツなどにおいて常に完璧な結果を求められ、結果第一主義で育てられた経験も影響していると考えられます。
その人の意思や努力の過程ではなく、「結果を出せたかどうか」だけで価値を判断されてきた場合、「結果を出せない人間は価値がない」という歪んだ価値観を内面化してしまう可能性があります。
前述したCDCのページにおいても、精神的なネグレクトや虐待は逆境体験に含まれます。
過度な期待は、時に子どものありのままの姿を否定することに繋がりかねません。
このような環境で育つと、社会に出てからも他者に対して「結果」のみを厳しく求め、それができない相手に対して高圧的な態度で接してしまうことがあり得ます。
ありのままを認められなかった経験

「良い子でいれば愛される」「親の言う通りにすれば認められる」といった、条件付きの愛情で育てられた経験も、自己肯定感の形成に影響を与えます。
自分の素直な感情や欲求を表現しても受け入れられず、親や周囲の期待に応えている時だけ評価されるという経験が続くと、ありのままの自分に価値があるとは感じられなくなります。
これが、前述した自己肯定感の低さや劣等感の根本的な原因となっている場合があります。
こうした「ありのままを認められない」経験も、子どもの安全な発達を妨げる要因の一つと見なせます。
その結果、成人してからも内面の不安を隠すため、他者より優位に立とうと高圧的な振る舞いに出てしまう可能性が考えられます。
過保護な環境と挫折経験の少なさ

これまでの育ち方とは対照的に、過保護・過干渉な環境で育ったことが影響するケースもあります。
親が子どもの失敗を極度に恐れ、先回りしてすべての障害を取り除いてきた場合、子どもは「自分の思い通りにならない状況」に直面する経験が乏しいまま成長します。
その結果、社会に出て他者と関わる中で、自分の意に沿わない行動を取る人や、自分とは異なる意見を持つ人に出会った時、それを許容する術を知りません。
自分の思い通りにならないことへの耐性が極端に低いため、相手を力ずくでコントロールしようと、高圧的な態度に出てしまうのです。
これは、困難や理不尽を乗り越える「挫折経験」が少なかったために、対人関係の柔軟性が育まれなかった結果ともいえます。
これらの育ちの背景は、高圧的な態度を取る人の一側面に過ぎず、すべての人に当てはまるものではありません。
特定の育ちが必ず高圧的な性格に結びつくわけではなく、あくまで言動の背景を理解するための一つの視点として捉えてください。
高圧的な人が迎える末路
- 周囲から人が離れていく
- 信頼関係が築けずキャリアが停滞する
- 精神的な安らぎが得られない
周囲から人が離れていく

高圧的な態度を続ける人が直面する末路として、最も考えられるのは、社会的な「孤立」です。
短期的には、その威圧感によって周囲の人を従わせることができるかもしれません。
しかし、恐怖で縛り付けられた関係は、相手の自発的な意思や好意に基づいたものではありません。
部下や同僚、友人、さらには家族までもが、その言動に耐えきれなくなり、一人、また一人と物理的にも心理的にも距離を置いていきます。
結果として、誰も本音で話せる相手がいなくなり、表面的な付き合いしか残らなくなるのです。
厚生労働省がまとめた「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書によれば、パワーハラスメントを経験した人のうち、14.9%が「会社を退職した」と回答しています。(出典:令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書(概要版)|厚生労働省, 2024-03)
この結果からも、高圧的な言動が従業員の離職、すなわち「人が離れていく」ことの一因になり得ることがわかります。
信頼関係が築けずキャリアが停滞する

職場で高圧的な態度を取り続けることは、長期的なキャリア形成において深刻な停滞をもたらす可能性があります。
恐怖による支配は一時的な成果を生むかもしれませんが、部下や同僚の自発的な協力や創造性を奪います。
前述した厚生労働省の報告書では、パワーハラスメントを経験したことによる心身への影響として、「仕事に対する意欲が減退した」といった回答が61.1%を占めています。
これは、高圧的な言動がある職場では、従業員の仕事への意欲が低下しやすく、結果として人材の定着やチーム全体の生産性にも悪影響が及びかねないことを示しています。
組織から「短期的には成果を出せても、長期的な信頼関係を築けず、部下を育てられない」と判断された人物は、それ以上の重要なポジションを任されなくなり、結果としてキャリアが頭打ちになる可能性が高いといえます。
精神的な安らぎが得られない

周囲の人を高圧的な言動で支配し、自分の優位性を確認し続ける生き方は、本人にとっても精神的な安らぎを得られないものです。
その根底には、常に「他者に負けてはいけない」「弱みを見せてはいけない」という強い緊張感と恐怖があるからです。
他者を信頼することができず、常に周囲を敵や「自分を脅かす存在」として警戒し続けなければなりません。
このような状態では、心が休まる瞬間はほとんどありません。
年齢を重ね、立場や権力が失われていくにつれて、かつて高圧的に振る舞っていた相手からの協力は得られず、自分が築いてきた人間関係の脆さと向き合うことになります。
その結果、強い孤独感や後悔に苛まれるなど、精神的な平穏とはほど遠い末路を迎えることも少なくないのです。
高圧的な言動から自分を守るための対処法
- 感情的にならず冷静に対応する
- 自分事として捉えすぎない
- 接点を意図的に減らして物理的な距離を取る
- 一人で抱え込まずに第三者へ相談する
感情的にならず冷静に対応する

高圧的な言動に直面した時、重要な対処法の一つは、相手の土俵に乗って感情的にならないことです。
相手が期待しているのは、あなたが恐怖で萎縮したり、感情的に反発したりする姿かもしれません。
それに反応してしまうと、相手のペースに巻き込まれてしまいます。
大切なのは、相手の攻撃的な「感情(口調や態度)」と、相手が伝えようとしている「事実(業務上の要求など)」を切り離して考えることです。
感情の部分は受け流し、事実だけに対応することを心がけます。
例えば、「なぜ、こんなこともできないんだ」という高圧的な非難に対して、「すみません」と謝罪するのではなく、「ご指摘の点は、どの部分か教えていただけますか?」と、業務上必要な確認や事実のやり取りに焦点を絞って対応します。
これにより、相手の感情的なエネルギーを受け取ることを防ぎます。
| 高圧的な言動例 | 避けるべき反応 | 推奨する反応 |
|---|---|---|
| 「なぜ、こんなこともできないんだ」 | 「すみません、私が悪いです」と萎縮する | 相手の口調は無視し、事実のみ確認する |
| 「こんなの社会人としてありえない」 | 「そんな言い方ないじゃないですか」と感情的に反論する | 「つまり、この文章を修正すればよいのですね」と要求内容を復唱する |
| 「お前は本当にダメな人間だな」 | 相手の非難をすべて真に受けて落ち込む | 「今は相手が感情的になっているだけだ」と客観視する |
自分事として捉えすぎない

高圧的な言動を向けられると、「自分が何か悪いことをしたのではないか」「自分が無能だからだ」と自分自身を責めてしまいがちです。
しかし、これまでに触れた通り、相手が高圧的になる原因は、相手自身の内面にある劣等感や不安にあることが少なくありません。
高圧的な言動を受けたときは、「すべて自分のせいだ」と自分事として捉えすぎないことが大切です。
「相手の課題」と「自分の課題」を頭の中で分け、「この人は今、何か不安があって高圧的になっているんだな」と一歩引いて客観視してみてください。
相手の負の感情まで、自分が背負い込む必要はありません。
厚生労働省が示す「労働者の心の健康の保持増進のための指針」においても、「セルフケア」の重要性が説かれています。(出典:労働者の心の健康の保持増進のための指針|厚生労働省, 2015-11)
自分自身のストレスに気づき、それに対処することは、労働者一人ひとりが大切にすべきポイントでもあります。
相手の感情と自分の感情を切り離し、自分自身を守ることを最優先に考えることが大切です。
接点を意図的に減らして物理的な距離を取る

心理的な距離を取っても状況が改善しない場合は、物理的な距離を取ることも有効です。
高圧的な人と関わる時間が長ければ長いほど、心は疲弊していきます。
可能な範囲で、その人との接点を意図的に減らすことを心がけてみてください。
- 対面での会話を避け、メールやビジネスチャットなどテキストで連絡する
- 業務上不要な会話には応じない
- 可能であれば、上司に相談して座席を変更する
- リモートワークが可能な職場であれば、活用を検討する
前述した厚生労働省の指針で示される「セルフケア」の考え方は、単にメンタルを強く保つことだけではありません。ストレスの原因となる環境から可能な範囲で物理的に離れることも、セルフケアの一つといえます。
重要なのは、「逃げるのではなく、自分を守るために戦略的に距離を取る」という意識を持つことです。
自分にとって安全な環境を確保することは、決して悪いことではありません。
一人で抱え込まずに第三者へ相談する

高圧的な言動によって精神的に追い詰められ、萎縮してしまったり、業務に支障が出たりしている場合は、絶対に一人で抱え込まないでください。
あなたの信頼できる上司や同僚、あるいは社内の人事部など、第三者に相談することが非常に重要です。
相談する際は、感情的に「あの人が苦手だ」と伝えるのではなく、「いつ、どこで、どのような言動があり、その結果どう感じたか」という客観的な事実を記録して持っていくと、状況が伝わりやすくなります。
前述した厚生労働省の指針では、労働者自身が行う「セルフケア」だけでなく、上司が部下の相談に乗る「ラインによるケア」や、社内の専門家によるケアなど、事業場が取り組むべきメンタルヘルスケアの仕組みが示されています。
あなたが相談することは、組織として問題を把握し、職場環境を改善するための第一歩となります。
もし社内での解決が難しいと感じる場合は、外部の専門機関に助けを求めることも、自分を守るための大切な選択肢となります。
- 総合労働相談コーナー(厚生労働省)
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職場のあらゆるトラブル(解雇、労働条件、いじめ・嫌がらせなど)について、専門の相談員が無料で相談に応じてくれます。
- 法テラス(日本司法支援センター)
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法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスを提供する窓口です。問題解決の道筋や、弁護士・司法書士への相談窓口などを案内してくれます。
- みんなの人権110番(法務省)
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パワハラや差別など、人権に関わる問題についての相談を受け付ける電話窓口です。法務局の職員や人権擁護委員が対応します。
高圧的な人の育ちと末路まとめ
この記事では、高圧的な人の心理や育ちの背景、その人が迎える末路、そして具体的な対処法について解説しました。
高圧的な人に対してストレスや苦手意識を感じるのは、その理不尽な言動から生じる自然な感情です。
しかし、高圧的な言動の背景には、本人の劣等感や不安といった心理だけでなく、その人の育ちや家庭環境が関係している場合もあります。
大切なのは、感情的に反応するのではなく、冷静に相手の背景を理解し、自分を守るための視点を持つことです。
そして何より、一人で抱え込まず、自分自身の心の平穏を第一に守ることが重要です。
最後に、ここまでのポイントを振り返りましょう。
- 高圧的な心理は劣等感や恐怖の裏返しである
- 他者をコントロールしたい支配欲が背景にある
- 権威的な家庭環境が振る舞いの模倣に繋がる場合がある
- 結果第一主義の育ちが他者への不寛容に繋がる
- ありのままを認められない経験が自己肯定感を歪める
- 過保護と挫折経験の少なさが打たれ弱さに繋がる
- 育ちは態度の一因であり断定はできない
- 高圧的な人の末路として社会的に孤立しやすくなる
- キャリアの停滞を招き、周囲からの信頼を失うリスクが高まる
- 他者を警戒し続けることで、精神的な安らぎを得にくくなる
- 対処法は相手の感情と事実を切り離す
- 冷静に対応し相手の土俵に乗らない
- 相手の課題と自分の課題を分離し自分事と捉えすぎない
- 物理的に距離を取り接点を減らすことが有効である
- 一人で抱え込まず第三者や窓口に相談する

よくある質問
高圧的な人に言い返すのは有効ですか?
感情的に言い返すと相手をさらに刺激し、関係が悪化しやすいため推奨されません。
冷静に事実のみを伝えるか、まずは距離を置く対処法のほうが賢明です。
高圧的な人が職場にいて萎縮してしまいます。
萎縮するのは自分を守るための自然な反応です。
無理をせず、まずは心理的かつ物理的に距離を取り、自分を安全な場所に置くことを最優先にしてください。
高圧的な人はなぜ自分が正しいと思い込むのですか?
その人の育ちからくる自己肯定感の低さや、自分の弱さを隠したい心理が関係している場合があります。
他者を否定することでしか、自分の正しさや優位性を確認できない状態かもしれません。


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