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体調悪いのに出勤してくる人が迷惑な理由とリスク5選|心理と対処法

オフィスでマスクをして辛そうに咳き込む体調不良の日本人男性社員と、それを心配そうに見つめる周囲の同僚たち。体調悪いのに出勤してくる人が職場に与える迷惑やリスクを象徴するシーン。

職場で激しく咳き込んでいるのに無理をして出社してくる同僚を見て、不安や戸惑いを感じることはありませんか。自分への感染リスクや業務への支障を考えると、迷惑だと感じてしまうのは自然な反応です。

しかし、なぜ彼らは体調悪いのに出勤してくるのでしょうか。その背景には、個人の責任感だけでなく、休みづらい職場の空気や経済的な事情など、複雑な心理が隠されていることがあります。

この記事では、無理して出勤する人の心理的背景を紐解きながら、角を立てずに帰宅を促す具体的な対処法や、安心して休める環境作りのヒントを解説します。自分自身と職場の安全を守り、悩みを手放すための一歩を踏み出しましょう。

記事のポイント
  • 職場での感染拡大や生産性低下など、無理な出勤が招く具体的なリスクと迷惑の理由が理解できる
  • 「自分がいないと回らない」という思い込みや評価への不安など、休まない人の心理的背景がわかる
  • 角を立てずに帰宅を促す声かけや、上司への相談方法など、実践的な対処法が身につく
  • 自身の安全を守りながら、休みやすい職場環境を作るための具体的なアクションが明確になる

目次

体調悪いのに出勤してくる人が迷惑な理由とリスク

隣席の同僚の体調不良を気にして口元を覆い、感染リスクに不安を感じている日本人女性社員。体調悪いのに出勤してくる人が職場にもたらす迷惑な理由とリスクを示唆する場面。

体調不良での出勤は、単なるマナーの問題にとどまらず、職場全体に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。一人の無理な行動が、同僚の健康や業務効率、さらには職場の雰囲気までをも損なってしまうケースは少なくありません。

ここでは、感染症の拡大による健康被害や、チーム全体の生産性低下など、周囲が迷惑や不安を感じる具体的な5つの理由とリスクについて解説します。

感染拡大により自分や家族への影響が懸念される

体調不良の状態で出勤することの最も直接的かつ深刻な問題は、感染症を職場に持ち込み、広げてしまうリスクです。特にインフルエンザや風邪などのウイルス性疾患は、オフィスという閉鎖空間では咳やくしゃみなどを通じて急速に広がる傾向があります。

熱があるのに出勤する人が一人でもいれば、同僚への感染リスクは格段に高まります。さらに、ウイルスを自宅に持ち帰ってしまうことで、家族にまで影響が及ぶ可能性があります。

もし家族に高齢者や小さな子ども、持病を持つ人など抵抗力の弱い人がいる場合、その不安は計り知れません。

厚生労働省では、職場の感染対策に関する資料において「体調が優れない人が気兼ねなく休めるルールを定め、実行できる雰囲気を作る」ことを取組のポイントとして挙げており、職場での感染対策として体調不良者が休める環境づくりを推奨しています。(出典:職場における感染防止対策の実践例 ~取組の5つのポイント~|厚生労働省, 2021-04)

職場での感染は一人にとどまらず連鎖的に広がりやすいため、たった一人の無理な出勤が、結果として多くの従業員とその家族の健康を脅かす事態につながりかねません。周囲が「迷惑だ」と感じる背景には、こうした具体的な健康被害への懸念があるのです。

体調不良者の無理な出勤が引き起こす感染拡大の連鎖図。同僚への感染から家庭内感染、最終的に職場の機能不全に至るリスクフローを可視化。
感染リスクの連鎖イメージ

チーム全体の業務効率や生産性が低下する

体調不良をおして出勤する状態は「プレゼンティーズム(疾病就業)」と呼ばれ、実は欠勤するよりも職場全体の生産性に深刻な悪影響を与えることが多くの研究で明らかになっています。

横浜市立大学では、2025年の研究において、働く人が「気分が沈む」「眠れない」といった心身の不調を抱えながら仕事を続けることで生じるプレゼンティーズムおよびアブセンティーズムによる生産性損失が、日本全体で年間約7.6兆円(うちプレゼンティーズムによる損失が約7.3兆円、アブセンティーズムによる損失が約0.3兆円)にも達すると試算しています。(出典:メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に|横浜市立大学, 2025-06)

これは決して大げさな数字ではありません。体調が優れない状態では、どうしても集中力や判断力が低下し、普段なら数分で終わる作業に倍の時間がかかったり、ケアレスミスを誘発したりします。

本人のパフォーマンスが下がるだけでなく、周囲のメンバーがそのミスを修正したり、体調を気遣って業務を肩代わりしたりする必要が出てくるため、チーム全体の業務効率が著しく低下します。

さらに、ハーバード・ビジネス・スクールが発行する経営学の専門誌「Harvard Business Review」では、従業員の多くが体調不良での出勤経験を持ち、それが組織全体の生産性を下げていると報告しています。(出典:Research: Why Employees Work While Sick—and How Leaders Can Stop It|Harvard Business Review, 2025-06)

無理して出勤することは、個人の頑張りどころか、組織にとって大きなマイナスとなる行動なのです。

スクロールできます
影響の対象具体的なデメリット
本人への影響集中力の低下、ミスの増加、回復の遅れ
周囲への影響フォロー負担の増加、感染への不安、集中力の阻害
組織への影響経済的損失、チーム全体の士気低下、安全配慮義務のリスク
体調不良による出勤(プレゼンティーズム)の影響

心理的なストレスで職場の雰囲気が悪くなる

体調不良者が無理をして出勤している姿は、周囲のメンバーに複雑な感情と心理的ストレスを与えます。「あの人が頑張っているのだから、自分も多少の体調不良では休めない」という無言のプレッシャー(同調圧力)を感じたり、フォローを強いられることへの不満が募ったりと、職場全体の空気が重くなる傾向があります。

特に日本では休むことへの罪悪感が根強く、株式会社ライボが実施した調査では、休むことに対する罪悪感について、「とてもある」3.2%、「ある」8.3%、「どちらかといえばある」26.8%を合算した38.3%が”ある派”と回答しており、罪悪感を感じる理由では「同僚に迷惑をかけるから」が51.2%で最多となっていると報告しています(出典:日本経済新聞×Job総研『2023年 日本人の休み方実態調査』を実施|株式会社ライボ, 2023-10)。

目の前で無理をしている人がいると、この罪悪感はさらに刺激され、「休まないこと」が正義であるかのような錯覚に陥ってしまいます。こうした「休みづらい空気」が蔓延すると、従業員同士が互いに監視し合うようなギスギスした雰囲気になり、本来休むべき状態でも出勤せざるを得ない悪循環が生まれる原因となります。

結果として、職場全体のモチベーションやメンタルヘルスが悪化していくのです。

無理な出勤が職場の雰囲気を悪化させ、さらなる無理な出勤を生む悪循環(負のループ)を示したサイクル図。プレゼンティーズムによる職場環境の悪化プロセス。
無理な出勤が生む職場の悪循環

判断力や注意力の低下でミスや事故が発生しやすくなる

体調不良時には、身体的な辛さだけでなく、精神的な疲労も蓄積しているため、集中力や判断力が著しく低下します。このような状態で業務を続けることは、通常の状態であれば防げるはずの些細なミスや、取り返しのつかない重大な事故につながるリスクを高めます。

特に製造業、建設業、運輸業、医療現場など、安全性や正確性が厳しく求められる職場においては、体調不良による一瞬の判断ミスが、本人だけでなく同僚や第三者の命に関わる重大事故に直結する可能性もあります。無理をして働くことは、「頑張り」ではなく「安全軽視」と見なされるべき危険な行為であり、事故防止の観点からも避けることが望ましいリスクといえます。

体調不良時に起こりやすいミスの例
  • 数字の入力ミスや計算間違い
  • 連絡の行き違いや報告の漏れ
  • 確認不足による手順のスキップ
  • 機械操作の誤りや設定ミス
  • 運転中の反応遅れや注意散漫

体調不良でミスが増えると、必要以上に自分を責めて自己嫌悪に陥りやすい点にも注意が必要です。仕事でミスばかりして自己嫌悪に陥ったときの対処法については、「仕事でミスばかりして自己嫌悪に陥ったときの具体的な対処法と考え方」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

体調不良でも休めないという空気が広がる

たった一人が体調不良でも出勤する姿を見せることで、職場全体に「多少の体調不良なら休んではいけない」という暗黙のルール(組織文化)が定着してしまう恐れがあります。これは、本当に休むべき状況にある人さえも追い詰める悪循環の入り口となります。

実際、前述した株式会社ライボの調査では、休みづらい場面として「繁忙期」が65.0%で最多回答となり、次いで「仕事が溜まっている時」が58.6%、「自分以外に担当できない業務がある時」が48.8%となっており、業務の属人化や繁忙期が休暇取得の障壁となっていることが明らかになっています。

「休むと周りに迷惑がかかる」「評価が下がる」といった不安から無理をする人が増えれば増えるほど、健康管理よりも出勤すること自体が美徳とされる風潮が強まる傾向があります。このような環境では、従業員の健康意識が低下し、初期段階での休息がおろそかになりがちです。

その結果、本来なら数日の休養で回復したはずの不調が悪化し、長期休職や退職といった深刻な事態を招くリスクが高まるのです。組織の持続可能性を脅かす深刻な問題といえます。

繁忙期や業務の属人化が重なると、心理的なハードルが上がり、休みを言い出しにくくなる瞬間が生まれます。こうしたタイミングこそ、意識的に休む勇気を持つことが大切です。


無理をしてでも出勤してくる人の心理とは?

高熱があるにもかかわらず、責任感から無理をして出勤準備をする40代日本人男性の苦悩に満ちた表情。無理をしてでも出勤してくる人の心理的背景にある葛藤を描写。

周囲がどれほど迷惑だと感じていても、本人が出勤を続けてしまう背景には、個人の性格だけでなく、職場環境や経済的事情などの複雑な要因が絡み合っている場合があります。本人もまた、休みたいのに休めないジレンマを抱えているのかもしれません。

ここでは、過度な責任感や評価への不安、承認欲求など、無理をしてでも出勤を選択してしまう人の心理メカニズムについて解説します。

自分がいないと仕事が回らないと思い込んでいる

体調が悪くても出勤してくる人の多くは、「自分が休むと業務が滞ってしまう」「自分しかこの仕事はできない」という強い責任感や思い込みを抱えています。特に業務が属人化しており、特定の担当者しか詳細を把握していない職場環境では、この傾向が顕著になる傾向があります。

前述した株式会社ライボの調査では、休みづらい場面として「自分以外に担当できない業務がある時」を挙げる人は約半数に上ると報告しています。バックアップ体制が整っていない職場では、自分が休むことで同僚に過度な負担をかけてしまうという恐怖心にも似たプレッシャーを感じています。

しかし、実際には適切な引き継ぎや一時的な業務分担を行えば、短期間の不在はカバーできるケースがほとんどであると考えられます。本人の責任感の強さが、かえって「休まない」という選択を強固にし、結果としてパフォーマンスの低い状態で働き続けることにつながっています。

「自分が休むと仕事が回らない」という本人の思い込み(左)と、実際にはチームでカバー可能である現実(右)を比較したイラスト。責任感による心理的負担のギャップ図。
責任感による思い込みと現実のギャップ

休むことへの罪悪感や評価低下への不安がある

日本の職場において、休暇取得に対する罪悪感は依然として根強いものがあるといえます。多くの人が「同僚に迷惑をかけるから」「みんなが働いているのに自分だけ休むのは申し訳ない」という理由で、休むことに後ろめたさを感じています。

特に若手社員ほどこの傾向が強く、周囲への配慮が過剰なプレッシャーとなっている場合があります。

前述した株式会社ライボの調査では、休むことに罪悪感を感じる人の多くが「同僚への迷惑」を理由に挙げており、組織内での同調圧力が影響していることが示唆されています。

また、人事評価への不安も大きな要因です。「体調管理不足だと評価されるのではないか」「責任感に欠けると見なされ、昇進に響くのではないか」といった懸念から、体調不良を隠して出勤するケースも少なくありません。本来、体調管理はプロフェッショナルの条件ですが、古い慣習が残る職場では「休まず働くこと」が評価される傾向があり、それが従業員の不安を煽っています。

休むことに罪悪感を感じる主な理由
  • 同僚に業務の負担や迷惑をかけるから
  • 他の同僚が休まずに働いているから
  • 上司に迷惑をかける、または管理能力を疑われるから
  • 休むことで人事評価が下がると不安だから

なお、体調管理ができない人の特徴や原因については、「体調管理ができない人の6つの特徴と原因|周囲への影響や改善策」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

休みづらい職場環境や周囲の圧力に逆らえない

個人の心理だけでなく、職場全体の雰囲気や「同調圧力」が無理な出勤を強いているケースも多々あります。例えば、上司が体調不良でも絶対に出勤するタイプであったり、同僚たちが有給休暇をほとんど取得していなかったりする場合、無言のうちに「休んではいけない」というメッセージが発信されていることになります。

前述した株式会社ライボの調査では、休暇取得のタイミングを「周りに合わせる」と回答した人が多く、休暇が個人の権利ではなく、周囲との調整が必要な行為として認識されている実態があると報告しています。制度上は休暇が取れても、「忙しい時期に休むなんて非常識だ」という空気があったり、休んだ後に嫌味を言われるような環境だったりすれば、誰でも休むのを躊躇してしまいます。

本人が休みたいと思っていても、環境的な圧力がそれを許さない状況が、無理な出勤を生み出す要因となっています。

上司の態度、繁忙期、人手不足といった環境要因が、従業員に対して「休めない圧力」を与えている構造を示した図解。無理な出勤を誘発する外的要因の可視化。
職場環境が生む休めない圧力

有給休暇の残日数や収入減への不安がある

経済的・制度的な理由も、体調不良時の出勤を後押しする切実な要因です。有給休暇の残日数が少ない場合、将来の旅行や冠婚葬祭、万が一の長期療養のために「今は温存しておきたい」という心理が働き、多少の体調不良なら我慢して出勤するという判断になりがちです。

また、非正規雇用や時給制で働く従業員にとっては、休むことが直接的な「収入減」につながります。生活費への不安から、体調が悪くても休めないという経済的なプレッシャーは非常に強力です。

さらに、休むことで自分の仕事が溜まり、復帰後に残業などで苦労することが目に見えている場合、「後で大変になるくらいなら、今無理をしてでも片付けた方が楽だ」と考える人もいるのが実情です。このように、制度や収入面での不安が、健康よりも出勤を優先させる合理的な理由になってしまっているのです。

将来のライフイベントや万が一の長期療養に備えて有給を残しておきたい心理が、目前の体調不良を我慢させる要因になります。しかし、悪化して長期休養になれば本末転倒です。

なお、新入社員で有給休暇が付与される前に仕事を休むことについては、「新入社員が有給ないのに休む時どうする?信頼を失わないマナーと対応」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

頑張る自分を認めてほしいという承認欲求が強い

意外に見落とされがちなのが、「承認欲求」に基づいた無理な出勤です。体調が悪くても出勤し、仕事に向き合う姿を見せることで、「自分はこれだけ頑張っている」「責任感が強い」と周囲に認めてもらいたいという心理が働いている場合があります。

特に、成果が見えにくい業務や評価基準が曖昧な職場では、「長時間働くこと」や「休まず来ること」が評価の対象になりがちです。そのため、体調不良をおして出勤することが、自分の存在価値を証明する手段や、自己肯定感を高める方法になってしまっているのです。

「大変だね」「無理しないで」と声をかけられることで、自分の頑張りが認められたと感じるケースもあるといえます。しかし、健康を犠牲にした承認欲求の充足は持続可能ではなく、組織にとってもリスクの高い行動パターンといえます。

無理をして働く自分に酔ってしまうと、健康を害するだけでなく、周囲に心配をかけることでしか承認を得られない歪んだ関係性を生んでしまいます。本当のプロ意識とは、万全の状態で成果を出すことです。

承認欲求が強い人の特徴や原因、対処法については、「承認欲求が強い人がうざいと感じた時の対処法|原因や特徴を徹底解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。


体調悪いのに出勤してくる人への適切な対応策

体調不良の日本人男性同僚に対し、優しく帰宅を促す声かけを行っている30代日本人女性社員。体調悪いのに出勤してくる人への適切な対応策としての思いやりのあるコミュニケーション。

体調不良の同僚に対して、どのように接すれば角を立てずに帰宅を促せるのか、悩むことも多いのではないでしょうか。感情的にならず、かつ効果的に対処するには、状況に応じた段階的なアプローチが必要です。

ここでは、相手を気遣う効果的な声かけフレーズや上司への相談方法、さらには自身の安全を守るための物理的な対策など、今日から実践できる具体的で適切な対応策について解説します。

相手を気遣いながら帰宅を促す

体調不良の同僚に帰宅を促す際は、相手を責めるのではなく、あくまで「心配している」というスタンスで接することが重要です。いきなり「帰った方がいい」と言うと、相手は「迷惑がられている」と感じて反発心を抱くかもしれません。

まずは「顔色が優れないようですが、大丈夫ですか?」「無理をされていませんか?」と、相手の体調を気遣う言葉から始めるのが良策です。

その上で、「今日は早めに帰って休養された方が、回復も早いと思いますよ」「明日のためにも、今日はゆっくり休んでください」と提案します。この時、最も重要なのは「仕事の不安を取り除くこと」です。

「残りの業務は私が対応します」「急ぎの案件は調整しておきますので安心してください」と伝えることで、帰宅への心理的ハードルを下げることができます。強制ではなく、相手の健康を第一に考えた提案として伝えることが、スムーズな帰宅を促す鍵となります。

角を立てずに帰宅を促す声かけフレーズ
  • 「顔色が優れないようですが、大丈夫ですか?」
  • 「無理をさせていないか心配です」
  • 「明日のためにも、今日は早めに休まれてはいかがですか」
  • 「残りの業務は私が対応しますので安心してください」

上司に相談して組織的な判断を仰ぐ

同僚からの声かけでも本人が帰宅しない場合や、明らかに業務に支障が出ている場合は、上司に相談して組織的な判断を仰ぐのが適切です。上司には「同僚の咳がひどく、辛そうに見えます」「周りのメンバーも感染を心配しています」と、客観的な事実とチームへの影響を冷静に伝えることが大切です。

安全配慮義務の観点から、企業には従業員の健康を守る責任があり、前述した厚生労働省の資料では、体調不良時の勤務制限を推奨しています。上司から「今日は帰りなさい」と指示が出れば、本人も「命令なら仕方ない」と納得しやすく、罪悪感を持たずに帰宅できる場合があります。

告げ口をするようで気が引けるかもしれませんが、本人とチーム全体を守るための必要な行動です。上司を巻き込むことで、個人の問題から組織の課題へと対応レベルを引き上げることができます。

「同僚が辛そうで心配です」という感情だけでなく、「咳がひどく、周囲の業務集中力が下がっています」とチームへの影響を併せて伝えると、上司は判断しやすくなります。

物理的な距離を確保して自分の身を守る

どうしても本人が帰宅しない、あるいは帰宅させられない状況の場合、最優先すべきは自分自身の健康を守ることです。物理的な対策として、可能であれば座席を移動し、体調不良者との距離を確保しましょう。会議室や空いているデスクへの一時的な移動を上司に相談するのも有効な手段となります。

また、マスクの着用を徹底し、手洗いや手指消毒の頻度を上げる、オフィスの換気をこまめに行うといった基本的な感染対策を強化します。前述した厚生労働省の資料では、人との距離確保や換気の重要性を強調しています。

さらに、自分自身の免疫力を落とさないよう、十分な睡眠と栄養をとることも大切です。冷たいようですが、共倒れを防ぐためには「自分の身は自分で守る」という意識で、ドライに距離を置くことも必要な対処法の一つです。

フォロー体制を構築して休みやすい環境を整える

体調不良でも無理して出勤する問題を根本から解決するには、「誰かが休んでも業務が回る仕組み」を作ることが不可欠です。特定の人しかできない業務(属人化)を減らすために、マニュアルを作成したり、チーム内で業務内容を共有(クロストレーニング)したりして、お互いにカバーできる体制を整えることが求められます。

日常的に「おたがいさま」と助け合う文化があれば、いざという時に「申し訳ない」と思わずに休むことができます。また、業務の優先順位を明確にし、担当者が不在でも急ぎでない案件は後回しにするというルールを決めておくことも有効な対策といえます。

前述した厚生労働省の資料では、気兼ねなく休めるルール作りが職場環境改善の鍵であるとしています。休みやすい環境は、体調不良時だけでなく、育児や介護など様々なライフイベントにおいても全員にとってプラスとなる働きやすい職場につながります。

誰もが休みやすい職場環境を作るための4つのステップ図。業務の可視化、マニュアル作成、相互フォロー体制の確立を経て、休暇取得の促進に至るプロセスフロー。
休みやすい環境を作るステップ

体調悪いのに出勤してくる人への悩みを手放すために

オフィスの窓際でコーヒーを飲みながらリラックスし、穏やかな表情を見せる日本人女性社員。体調悪いのに出勤してくる人への悩みを手放し、自分の健康を優先する前向きな姿勢。

この記事では、体調不良で出勤してくる人が迷惑な理由や心理、そして適切な対応策について解説しました。

他人の行動を変えることは難しく、無理な出勤を続ける同僚にイライラしたり不安を感じたりするのは当然のことです。しかし、相手を責めるだけでは状況は変わらず、悩み続けてストレスを溜め込むことは自身の健康にも良くありません。

まずは自分自身の心身を守ることを最優先にし、物理的な対策や上司への相談など、自分がコントロールできる範囲で冷静に対処することが大切です。「組織や本人の問題」として境界線を引き、過度な悩みを抱え込まないことが、結果として前向きに働き続けるための鍵となります。

最後に、ここまでのポイントを振り返りましょう。

  • ウイルスを持ち込むことで同僚だけでなく、その家族にまで感染を広げるリスクが懸念される
  • 本人の能力低下に加え、周囲のフォロー負担も増えることでチーム全体の生産性低下につながる
  • 無理な出勤は同調圧力を生み、職場の空気を悪化させてメンタルヘルスに悪影響を及ぼす
  • 集中力の低下は事務的なミスだけでなく、取り返しのつかない重大な事故を引き起こす原因になり得る
  • 一人の無理な出勤が休んではいけない暗黙のルールを作り出し、組織の持続性を損なう原因である
  • 業務の属人化により、自分が休むと仕事が回らないという過度な責任感や思い込みを抱きやすい
  • 同僚への迷惑や人事評価への悪影響を懸念し、休むことに対して強い罪悪感を抱く傾向がある
  • 上司が休まないなど職場の同調圧力により、本人の意思に関わらず休むことが難しい状況である
  • 将来のための有給温存や収入減への経済的な不安が、健康よりも出勤を選択させる要因である
  • 体調不良をおして働くことを頑張りの証と捉え、歪んだ形で承認欲求を満たそうとする傾向がある
  • 非難ではなく相手の体調を気遣い、業務の不安を取り除く声かけを行うことが帰宅を促すのに有効
  • 個人の対応が難しい場合は上司に事実を伝え、組織としての業務命令で帰宅を促す対応が適切
  • 自身の健康を守るためにマスク着用を徹底し、座席移動などで物理的な距離を確保することが大切
  • 業務の共有化やマニュアル整備を進め、誰でも気兼ねなく休める相互フォロー体制の構築が望ましい

よくある質問

体調不良の人に帰ってもらう際、波風を立てない伝え方はありますか?

「顔色が優れないようで心配です」「業務はカバーするので安心してください」と、非難ではなく気遣いと安心感を伝えるのが効果的です。

上司に相談しても状況が変わらない場合、どう考えればよいですか?

自分にできる対策(マスク着用や距離の確保)を徹底し、コントロールできない他人の行動については割り切って考えることも自身のストレス管理に有効です。

体調不良で休む際、評価への不安や罪悪感とどう向き合えばよいですか?

体調管理も仕事の一部であり、無理をして長引かせる方が組織の損失になると捉え直し、早めの回復に努めることがプロの姿勢です。

オフィスで体調不良の人が近くにいる場合、自分の身を守るためにはまず何をすべきですか?

マスクの着用や手洗いを徹底し、可能であれば会議室への移動や座席の変更を申し出るなど、物理的な距離を確保することが最優先です。

無理をして出勤することで、職場に与えるデメリットは何ですか?

感染症を広げるリスクに加え、集中力低下によるミスや生産性の低下(プレゼンティーズム)、周囲への心理的負担などが挙げられます。

オフィスでマスクをして辛そうに咳き込む体調不良の日本人男性社員と、それを心配そうに見つめる周囲の同僚たち。体調悪いのに出勤してくる人が職場に与える迷惑やリスクを象徴するシーン。

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