職場で「でも」「だって」「あの人のせいで…」といった言葉を頻繁に耳にすることがあります。
これらの言葉は、問題の原因を自分以外に求める他責思考のサインかもしれません。
他責思考は、本人の成長機会を奪うだけでなく、職場の雰囲気やチームの生産性にも影響を与えかねない重要なコミュニケーション課題になり得ます。
この記事では、他責思考の人の口癖と、その言葉の裏にある心理的背景を解説します。さらに、他責思考になる主な原因や、職場での上手な接し方についても紹介します。
まずは他責思考の人の口癖や心理を理解し、職場でのコミュニケーションを改善するヒントを見つけていきましょう。
- 他責思考の人の口癖と隠された心理がわかる
- 他責思考になる主な原因が理解できる
- 他責思考の人への上手な接し方を学べる
- 職場でのコミュニケーションを改善するヒントが得られる
他責思考の人の口癖と隠された心理
- 自分の非を認めない
- 責任を他人や環境に押し付ける
- 言い訳をして自分を正当化する
- プライドが高く傷つきやすい
「でも」「だって」で言い訳から入る

他責思考の人が頻繁に使う口癖の一つが「でも」や「だって」です。これらは、指摘やフィードバックを受けた直後に反射的に出やすい言葉です。
この言葉の裏には、指摘を受け入れにくく、まず自分の事情を説明したいという心理が隠れています。自分の非を認める前に、外部の要因や他者の行動を理由として挙げ、自己の正当性を先に確保しようとする防御的な反応です。
例えば、ミスを指摘された際に「でも、上司から指示がなかったので」と即座に返すケースでは、問題解決よりも「自分の非を最小化する意図」が前面に出ています。
この口癖が続くと、内省や学びの機会が減り、同様の誤りを繰り返す可能性があります。
「あの人のせいで」で他者を非難する

問題や失敗の原因を特定個人に帰するのは、他責思考の典型です。「あの人のせいで」「同僚が言ったから」といった表現は、自分は適切に行動したが他者の要因で失敗したという構図になります。
この口癖は、自分の判断や確認不足には触れず、他者を直接的に非難することで責任の所在を外部に向けようとする意図があります。
プロジェクトが遅延した際に「あの人がデータを出すのが遅かったせいです」と主張するのは、その典型例です。
それが事実の一部であったとしても、遅延を予測して事前に対策を講じなかった自分自身の責任については一切言及しません。これは、チームワークや信頼関係を損なう可能性があります。
「私は悪くない」で強い自己防衛に走る

「私は悪くない」という言葉は、他責思考の中でも特に直接的で、強い自己防衛の心理が働いています。このフレーズは、自分の責任を強く否定し、非難の矛先が自分に向くことを極端に恐れている状態を示しているといえます。
失敗や責任を認めることを、自分の価値や存在そのものの否定と捉えがちなため、頑なに「自分ではない」と主張し続けることがあります。このタイプは、自分を守るために情報を選択的に示したり、解釈が自分に有利な方向へ偏りやすくなったりする場合があります。
客観的な事実を提示されても「それはそうかもしれないが、私の責任ではない」という姿勢を崩さない場合、周囲はこれ以上踏み込めなくなり、問題の根本的な解決が困難になります。
「聞いてません」で情報不足のせいにする

「聞いてません」「知らなかったです」という口癖も、外部へ責任を転嫁する典型例です。「情報が与えられなかったから自分は動けなかった」という論理で、情報を伝えなかった周囲の人々に責任を押し付けます。
確かに情報共有は重要ですが、この口癖を使う人は自分から能動的に情報を取りに行ったり、不明点を確認したりする努力を怠っていることが少なくありません。「知らなかった」という状態を盾にして、自分の行動責任を回避しようとします。
情報を伝達する側に非があったとしても、「聞いてません」と突き放すだけでは、状況改善は図れません。
「時間がなかった」で外的要因に逃避する

納期に間に合わなかったり、成果物の品質が低かったりした際に、時間がなかったことを理由にするのも他責思考の一つの現れです。時間という外部要因のせいにすることで、責任を回避しようとしています。
多くの場合、本当の問題は時間の絶対量ではなく、自身の計画性のなさ、優先順位付けが甘い、あるいはキャパオーバーしているにもかかわらず仕事を断れないといった自己管理の課題にあります。
「時間がなかった」という言葉は、それらの内的な問題から目をそらし、「仕方なかった」と自分を正当化するための言い訳です。
この口癖が見られる人は、自身のタスク管理や見積もりの甘さを振り返ることが難しく、周囲に振り回される状況が続きます。
「普通は」で自分の価値観を押し付ける

「普通はこれで合っていますよね?」「常識的に考えて」といった言葉は、自分の価値観や基準があたかも正解であるかのように提示し、それに従わなかった相手や状況を暗に非難する口癖です。
「人によって普通や常識は異なる」という前提が欠落しており、自分の物差しで一方的に他者を判断しようとする姿勢が表れています。この言葉の裏には、「自分は正しく、相手や環境が間違っている」という主張が隠されています。
例えば、「普通はこれくらいできますよね?」と後輩に言った場合、それは指導ではなく、自分の基準に達していないことへの非難である可能性があります。
このようなコミュニケーションは、相手を萎縮させ、多様な考え方を阻害する恐れがあります。
他責思考になる原因とは?
- 自己防衛本能が働いている
- 自己肯定感が低く自信がない
- 過去の経験や育った環境の影響
自己防衛本能が働いている

他責思考になる原因の一つに、人間の持つ「自己防衛本能」が挙げられます。失敗やミスを自分の責任として認めることは、心理的に大きな苦痛やストレスを伴います。
特にプライドが高い人や、他者からの評価を過度に気にする人は、「自分は有能である」「人から悪く思われたくない」というセルフイメージを持っています。このため、失敗やミスを犯すことは、そのセルフイメージを傷つける脅威として認識される場合があります。
その結果、無意識のうちに「自分は悪くない」という理由付けを行い、責任を自分以外のものに押し付けます。これは、心理的なダメージから自分自身を守ろうとする本能的な防御反応といえます。
プライドが高い人の特徴や心理、上手に付き合うための対処法については、「プライドが高い人は育ちが原因?心理的な背景と対処法を徹底解説」の記事で詳しく解説しています。

自己肯定感が低く自信がない

意外に思われるかもしれませんが、他責思考の背景には、自己肯定感の低さや自信のなさが隠れているケースも多くあります。ありのままの自分を受け入れ、「自分には価値がある」と感じる感覚が低い状態です。
英国国民保健サービス(NHS)の公式ページでは、自己肯定感を高める方法について解説しています。(出典:How to be happier: Boost your self-esteem|NHS, 最終閲覧日 2025-11)
自己肯定感が低いと、失敗やミスに直面した際、それを行動の結果そのものではなく、自分の価値を否定するものとして捉えてしまいがちです。
失敗を認めると、自分の能力不足や価値のなさを証明したように感じるため、他者や環境に責任を転嫁して自分の価値を守ろうとするのです。
なお、自己肯定感が低い原因や改善法については、「自己肯定感が低い大人は手遅れ?4つの理由と高める方法を詳しく解説」の記事で詳しく解説しています。

過去の経験や育った環境の影響

他責思考は、生まれ持った性格だけでなく、過去の経験や育った環境によって後天的に形成されることもあります。特に幼少期や思春期の経験は、その後の思考パターンに大きな影響を与える可能性が高いです。
例えば、失敗するたびに親や教師から過度に厳しく叱責されたり、人格を否定されたりする経験を繰り返してきた場合、恐怖心が刷り込まれていることがあります。その結果、自分を守るために、無意識に責任を転嫁する癖がついてしまうのです。
逆に、過保護な環境で育ち、失敗しても常に誰かが後始末をしてくれた場合、自分で責任を取るという経験そのものが不足します。そのため、社会に出て困難な問題に直面したときに、どう対処していいかわからず、慣れ親しんだ「誰かのせいにする」というパターンに陥ってしまうこともあります。
他責思考の人への上手な接し方
- 感情を抑えて事実を確認する
- 相手の言い分を一度受け止める
- 責任の追及よりも未来志向に切り替える
- 1対1で具体的に伝える
感情を抑えて事実を確認する

他責思考の人が「でも」「あの人のせいで」と言い訳を始めたとき、こちらも感情的になって反論しては、水掛け論に陥るだけです。相手はさらに自己防衛を強め、事態は悪化します。
まず重要なのは、こちらの感情を抑え、起きた事実だけを確認することです。
相手の解釈や感情は置いておき、「いつ起きたのか」「具体的に何があったのか」「誰が関わっていたのか」といった客観的な事実を整理していきます。事実認識を共有することで、感情的な議論から抜け出す第一歩となります。
| 確認する事実 | 具体的な質問例 |
|---|---|
| When(いつ) | その件はいつ発生しましたか? |
| Who(誰が) | その時、誰が関わっていましたか? |
| What(何が) | 具体的に何が起きましたか? |
| How(どのように) | どのような経緯でそうなりましたか? |
相手の言い分を一度受け止める

他責思考の人の発言を、いきなり否定するのは逆効果です。相手は攻撃されたと感じ、さらに頑なに心を閉ざしてしまう可能性があります。
相手の反発を招かずに考えを整理させるためには、まず相手の言い分を受け止める姿勢が不可欠です。
厚生労働省の「こころの耳」では、職場のコミュニケーションにおいて、傾聴(相手の話を受け止めること)の重要性を説いています。(出典:部下の話を聴けていますか-傾聴のすすめ-|厚生労働省「こころの耳」, 最終閲覧日 2025-11)
その内容が言い訳や責任転嫁に聞こえても、まずは相手の感情や認識をそのまま受け止めます。その上で質問を重ね、相手自身に状況を客観的に話してもらうことで、冷静に事実を振り返るきっかけを作ることができます。
責任の追及よりも未来志向に切り替える

他責思考の人との会話で不毛なのは、「誰が悪かったのか」という過去の責任を追及することに終始することです。
他責思考の人は、責任の追及を極端に恐れているため、この議論が続く限り自己防衛的な言い訳を繰り返すだけです。
事実確認がある程度終わったら、議論の焦点を過去から未来へと切り替えることが賢明な判断といえます。
「なぜ起きたか」よりも「次にどうするか」という建設的な会話に切り替えることで、相手は「責められている」という意識が薄れ、自己防衛の姿勢を解く可能性があります。この未来志向の対話こそが、具体的な改善行動につながります。
1対1で具体的に伝える

他責思考の人にどうしても注意や指摘をしなければならない場合、その伝え方には注意が必要です。
他のメンバーがいる前で指摘することは、避けたほうが良い場合が多いです。人前で恥をかかされたと感じると、相手はプライドを守るために意固地になり、関係が修復困難になることさえあります。
このため、注意や指摘をする場合は、1対1になれる場所で落ち着いて伝えるようにします。その際も、「あなたはいつも言い訳ばかりだ」といった抽象的な非難は禁物です。相手は「いつもではない」と反発するだけです。
相手の体面を守りつつ、事実と要望に焦点を移す伝え方へ切り替えることが重要です。
具体的には、自分を主語にして感情や考えを伝える「アイメッセージ」が有効な手段といえます。

先日の資料提出の件ですが、私は進捗の共有が遅いと感じました。次回は締切の前日に一度共有してほしいです。
これは相手を非難するためではなく、あくまでも事実と要望を冷静に伝えるためのアプローチです。
他責思考の人の口癖と接し方まとめ
この記事では、他責思考の人の口癖とその言葉の裏にある心理的背景、他責思考になる主な原因、そして職場での上手な接し方を解説しました。
他責思考の人の言動にストレスを感じるのは、不公平感やコミュニケーションの難しさから生じる自然な感情です。しかし、その背景には、無意識の自己防衛本能や、過去の経験によって形成された自己肯定感の低さが隠れている可能性があります。
大切なのは、感情的に相手を非難するのではなく、事実に基づいて冷静に理解を深めることです。さらに、相手を変えようとせず、事実確認や未来志向への切り替えによって、自分自身を守りつつ冷静に対処することが重要です。
最後に、ここまでのポイントを振り返りましょう。
- 「でも」「だって」は、自己の正当性を確保しようとする防御的な反応である
- 「あの人のせいで」は、他者への直接的な非難である
- 「私は悪くない」は、非を認めることを恐れる強い自己防衛のサインである
- 「聞いてません」は、情報不足を理由に周囲へ責任転嫁する
- 「時間がなかった」は、自己管理の課題から目をそらしている
- 「普通は」は、自分の価値観を押し付ける表現である
- 他責思考の原因は、心理的苦痛から逃れる自己防衛本能にある
- 自己肯定感の低さが、失敗を自己価値の否定と捉えさせる
- 過去に厳しく叱責された経験なども、他責思考の原因になり得る
- 感情的にならず客観的な事実確認をすることが、上手な接し方の第一歩である
- 相手の言い分を否定せず、一度受け止めることが大切
- 責任の追及を避け、議論の焦点を過去から未来へと切り替える
- 注意や指摘は1対1の場で行い、アイメッセージで伝えることが望ましい


よくある質問
他責思考の人と関わりたくないのですが。
物理的に距離を置くことが可能であれば最も有効な手段の一つです。それが難しい職場などでは、感情的に反応せず事実確認のみで対応を終えるなど、心理的な境界線を引くことが大切です。
他責思考の上司との上手な付き合い方は?
上司の自己防衛本能を刺激しないよう、まずは上司の言い分を否定せず受け止める姿勢を見せることが有効です。その上で「次はどうすればうまくいくか」という未来の対策を相談する形で会話を進めることをお勧めします。
他責思考であることのメリットは?
短期的には、失敗を自分のせいにしないため、心理的な苦痛やストレスから自分を守れるという点では(本人にとっての)防衛的なメリットと言えるかもしれません。しかし、長期的には反省や学びの機会を失うため、成長が妨げられるデメリットの方が大きいと考えられます。



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